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ピッチャーさつじんじけん
投手殺人事件
「講談倶楽部 第二巻第五号」1950(昭和25)年4月10日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,243 字 · 57 页
上野光子といえば、球界では名題の女であった。女学生時代はバレーか何かの選手だったというが、五尺四寸ちょッとの素晴らしい体躯、肉体美人だ。好試合を追って、東奔西走、夕刊スポーツに観戦記をものして、スポーツファンの人気を博していたが、選手たちに対しては、怖ろしくニラミの利く存在だった。というのは、一流選手の大半は光子の誘惑の魔手にかかって関係を結んでおり、それを種におさえつけられているからであった。彼女に内幕をあばかれると、たいがいの名選手が家庭争議を起して、神経衰弱にならざるを得ない。
そのニラミをきかせて、フリーの女スカウトをやりだしたのだ。大鹿が顔をあからめているところをみても、彼も亦誘惑にまけた一人だと見当がつくのである。
「光子はこの隠れ家を知っているのだね」
「いえ、この家は葉子さん以外は誰も知りません。上野光子とは外でレンラクしているのです」
「そうかい。それは、よかった。光子がカクサクしても、三百万という大金はどこの球団もださないと思うが、かりに、その口があったにしても保留しておいてくれ。すぐ返事をもってくるから」
「ハ。では、お待ちしています。