轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
そうわ
挿話
徳田 秋声
「中央公論」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页
「お早よう」道太は声かけた。
「お早よう。眠られたかどうやったやら」
「よく寝た」そう言って道太が高い流しの前へ行くと、彼女は棚から銅の金盥を取りおろして、ぎいぎい水をあげはじめた。そして楊枝や粉をそこへ出してくれた。道太は楊枝をつかいながら、山水のような味のする水で口を漱いだ。
「昨夜はお客は一組か」
「え、一組、四時ごろに帰ってしまいました」
「それじゃ商売にならんね」
「ならんわに」お絹はそう言いながら、かんかん炭をたいて飯をたいていた。幅一間ばかりの長い廊下で、黒い板がつるつる光っていた。戸棚や何かがそこにあった。
廊下つづきの入口の方を見ると、おひろがせっせと雑巾がけをしていた。道太は茶の室へ出ていって、長火鉢の前に坐って、煙草をふかしはじめた。
「みんな働くんだね」
「働かんと姉さん口煩いから」おひろは微声で答えたが、始末屋で奇麗好きのお絹とちがって、面倒くさそうにさっさっとやっていた。
箪笥や鏡台なんか並んでいる店の方では、昨夜お座敷の帰りが遅かったとみえて、女が二人まだいぎたなく熟睡していて、一人肥っちょうの銀杏返しが、根からがっくり崩れたようになって、肉づいた両手が捲れた掻巻を抱えこむようにしていた。