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そうわ
挿話
徳田 秋声
「中央公論」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页
お絹はいつでもお茶のはいるように、瀟洒な瀬戸の風炉に火をいけて、古風な鉄瓶に湯を沸らせておいた。
「こんな風炉どこにあったやろう」道太を見に来た母親は、二階へ上がると、そう言ってその風炉を眺めていた。
「茶入れやお茶碗なんか、家にはずいぶんよいものもあったけれど、下の戸袋のなかへしまいこんでおいたものは、いつの間にかお客がみんな持っていってしもうて……」お絹はそんな話をしながら、
「軸ものも何やら知らんけれど、いいものだそうだ。たぶん山水だったと思う。それも辰之助が表装をしてやると言うて、持っていったきり、しらん顔をしているんですもの」
「蕪村じゃないかな」
「何だか忘れたけれど。今度そう言って持ってきてもらおうかしら」
それでも酒の器などには、ちょっと古びのついたものがまだ残っていて、ぎやまんの銚子に猪口が出たり、ちぐはぐな南京皿に茄子のしんこが盛られたりした。
お絹は蔭でそうは言っても、面と向かうと当擦りを言うくらいがせいぜいであった。少し強く出られると返す言葉がなくなって、泣きそうな目をするほど、彼女は気弱であった。いつかの夜道太は辰之助と、三四人女を呼んだあとで、下へおりて辰之助の立てたお茶なぞ飲んでいると、そこへ毎日一回くらいは顔を出してゆく、おひろの旦那の森さんがやってきて、電話をかけて芝居の場所を