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そうわ
挿話
徳田 秋声
「中央公論」1925(大正14)年1月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页
お絹からいえば、道太に皆ながつれていってもらうのに、辰之助を差し措くことはその間に何か特別の色がつくようで、気に咎めた。辰之助を除外すれば、色気はないにしても、慾気か何かの意味があって、道太を引きつけておくように、道太の姉たちに思われるのが厭であった。それでなくとも辰之助の母である道太の第一の姉には、お絹たちはあまり好感をもたれていなかったし、持ってもいなかった。それは辰之助が今は隣国で廓のお師匠さんをしている、お絹のすぐ次ぎの妹のお芳と関係していた時分からのことであった。二人のあいだには子まであった。お芳は一度は辰之助の家へ入ったけれど、母親との折合いがつかなかったので、やがて二度の勤めをするようになった。
それに今一つの理由としては、辰之助の妹婿の山根がついこのごろまでおひろと深い間であったことで、恋女房であった彼の結婚生活が幸福であった一面に、山根はよくおひろをつれて温泉へ行ったり、おひろの家で流連したりして、実家の母をいらいらさせた。最近山根は酒をやめた。そしておひろとも手が切れたけれど、どうかするとよその座敷などで、おひろは山根と顔を合わすこともあった。