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そうわ

挿話

徳田 秋声

「中央公論」1925(大正14)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,544 字 · 53 页

青空文庫

、懐かしい昔の追憶を繰り返していた。

「和田さんの家は器量統で、その人も美しかったという話や。お士から町家へお嫁づきなすった」

とかく道太と、そして道太と同じ腹から生まれた姉妹とは、その系統はずれであった。

「しかしいくつです」

「もう七十四です。このお婆さんより二つ上です。少い時分私がこの人を始終お負ぶしてね」

道太はそんながりがりした老婆をかつて見たことがなかった。

「奥さんのお墓参りなさいましたか」

「いずれ帰るまでには……」道太は笑っていた。

「私も一遍おまいりしたいと思うて」

道太はお絹の母である方のお婆さんにも、たびたびそれを言われていた。

そのお婆さんは、自分で手拍子を取りながら、唄を謳って、四つの孫に「春雨」を踊らせていた。子供は扇子を持って、くるくる踊っていたが、角々がきちんと極まっていた。

「お絹ばあちゃがお弟子にお稽古をつけているのを、このちびさんが門前の小僧で覚えてしまうて……」祖母は気だるそうに笑っていた。

それがすむと、また二つばかり踊ってみせた。御褒美にバナナを貰って、いつか下へおりていった。

「ここでも書きものができましょうがね」