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たんていのまき

探偵の巻

坂口 安吾

「都新聞 第一八三四二~一八三四四」1938(昭和13)年11月24~26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,368 字 · 9 页

青空文庫

直に駈つけた三宅君、不良少女の手紙の山を読みはじめると、ウームと痛烈な呻きを発して喰ひつくやうに手紙を握り、あとは小生の言葉も耳にはいらぬ有様である。

「こりや、いいな。早速片つぱしから、不良少女を訪問しませうや。男の子譲つてくれてメニサンクスなんてのは、こりや、どうせシャンぢやないな。かういふ奴は後まはしにして、このスケートは相当のシャンだね。まづ最初にこの子のところへまはつて――」

と、勇み立つこと限りもない。これは大変な助手を頼んでしまつたと小生甚だ怖れをなしたが、小生以上に慌てたのが食堂の親爺夫婦で「うちの娘探すついでに、よその嬢さん口説かれては、わやや」と大義名分の通つた煩悶、即ちおかみさんが一緒についてくることになつた。駟も舌に及ばず、三宅君地団駄ふんだが、後の祭で、及ばない。

かくして怪しげな三人連れがそれからの三日間、不良少女をあれからこれへと戸別訪問したのだが、皆目手掛りがない。

甲は乙さんなら知つてる筈だといふ。乙は丙さんならと言ひ、丙はまたあら乙さんひどいわ自分知つてやはるくせにと言ふ。堂々めぐりである。よくも斯うまで自分ひとり好い子になれると呆れ返つて文句もないほど、他人のスキャンダルは洗ひざらひ喋べつてきかせる。