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つめ
探偵クラブ 烙印
大下 宇陀児
大下宇陀児『探偵クラブ 烙印』。同一底本的分册已合并为一书。收入:爪、毒、偽悪病患者。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,509 字 · 103 页
博士は、確かにそれ程の深い意味を有たせていったのではなかったのだろう。けれども夫人の方は眉根に、苛々しい皺を刻んでいきなりコップを奪い取った。
「あ、お前、それを飲むのか」いったのは佐々沼であった。
「ええ」と答えて、夫人は意味あり気な瞬きをした。
「大丈夫でしょ一杯ぐらい。……あたし、酔ってなんかしまわないから」
「あ、ああ、……そうか……。大丈夫だ、お飲み。ナンなら、僕もそのあとで頂戴しよう」
伯太郎は、前に、ママちゃんと佐々沼の小父さんとが、その薬が一ぺんや二度飲んだだけではなかなか利いて来ないといっていた、あの時の会話を思い出していた。そうしてその間に博士夫人は、一思いにぐっと葡萄酒を飲み乾してしまって、唇をキュッとすぼめていた。
「どうだった」
「なんともありはしないわよ。お兄様も一パイ召し上る?」
「ウム」
佐々沼も、博士に見せびらかすようにして、ゆっくりゆっくり罎を片手に持ち、それをコップへ注いで行ったけれど、その時、突然に叫び出したのが露子だった。
「いやでちゅ、いやでちゅ。そのお酒、パパに上げなければ露子いやでちゅ」
「いいよいいよ、パパ、あとで飲むんだから」