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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
「又かい」
根岸刑事がにや/\しながら聞いた。
「執拗い奴だね」
傍にいた大島主任が云った。
「あゝ、そう/\。君の持って来た写真は複写して、今朝各署へ配付したよ」
「そうでしたか」
石子は簡単に返事をして、静に手紙の封を切った。予期した通り中には嘲笑的な文句が充満していた。
「はがき有難うよ。十万円は用意してあるから、いつでも取りに来いよ」
と云う文句に突当ると、石子は鳥渡首を傾けたが、急に頓狂な声を出した。
「あいつは留守宅と連絡しています」
「何だって?」
主任が驚いたように聞いた。
石子は口早に十万円云々で腹立まぎれに留守宅へはがきを出した事を話した。
「その返辞が来たと云う訳だね」
根岸刑事は暫く腕を組んで考えていたが、
「もう一度写真屋の浅田を召喚しなければならぬ」
「一度喚んだのですか」
石子が聞いた。
「うん、君が奔走している間に一度喚んだのだがね、旨く云い抜けて中々本当の事を云わない。あいつも相当喰えない奴だよ。思う所があって態と帰宅を許したのだがね。彼奴の行動については渡辺刑事が気をつけている筈だよ」
「支倉の奴が私の宅の近所へ来たんですよ」
石子は思い出したように云った。