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ほうろうき(しょしゅつ)

放浪記(初出)

林 芙美子

「女人藝術」1928(昭和3)年10月号~1930(昭和5)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 103,349 字 · 207 页

青空文庫

ひょっとしたら、裏日本の市振と云う処へ行くかも知れません。生きるか死ぬるか、とに角、旅へ出たい。

弱き者よの言葉は、そっくり私に頂戴出来るんですが、それでいいと思う、野性的で行儀作法を知らない私は、自然へ身を投げかけてゆくより仕方がない。此儘の状態では、国への仕送りも出来ないし、私の人に対しても済まない事だらけです。

私はがまん強くよく笑って来ました、旅へ出たら、当分田舎の空や土から、健康な息を吹きかえすまで、働いて来るつもりです。

体が悪るいのが、何より私を困らせます。それに又、あの人も病気ですし、厭になってしまう。金がほしいと思います。

伊香保の方へ下働きの女中にでもと談判したのですが、一年間の前借百円也ではあんまりだと思います。

何のために旅をするとお思いでしょうけど、とに角、此まゝの状態では、私はハレツしてしまいます。

人々の思いやりのない雑言の中に生きて来ましたが、もう何と言われたっていゝ私はへこたれてしまった。

冬になったら、十人力に強くなってお目にかゝりましょう、いちかばちか行くところまで行きます、私の妻であり夫である、たった一ツの信ずる真黄な詩稿を持って、裏日本へ行って来ます。