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となんせんせい
斗南先生
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,262 字 · 44 页
前の遺稿の序文にもあったように、伯父は妻をめとらなかった。それが何に原因するものであるかを三造は知らない。伯父はまた常に、三造には無目的としか思えないような旅行を繰返していた。支那には長く渡っていた。それは伯父自身がいう如く、国事を憂えて、というよりも、単に、そのロマンティシズムにエグゾティシズムにそそられたためといった方がいいのではないかと、高等学校時代の三造は考えていた。この彷浪者魂は彼の一生に絶えずつきまとっていたように見える。三造の知っているかぎり伯父は常に居をかえたり旅行したりしていたようであった。この彷徨を好む気質が自分にも甚だ多く伝わっていることを、三造は時々強く感じなければならなかった。ただ、伯父の生活の経済的方面は久しく彼の謎であった。伯父はかつて、『支那分割の運命』なる本を出したことがあった。が、そんな売れない本から印税がはいるはずはなかった。大分後になって、(それは伯父の晩年になってからのことであるが、)伯父は経済的にはほとんど全部他人の――友人や弟たちや弟子たちの――援助を受けていることが分った時、三造は、まず、この点に向って、心の中で伯父を非難した。