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となんせんせい
斗南先生
「光と風と夢」1942(昭和17)年7月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,262 字 · 44 页
このことが、その頃の彼には、概念的にしか、つまり半分しか呑みこめなかったのである。
二
その年の二月、高等学校の記念祭の頃、本郷の彼の下宿へ、伯父から葉書が来た。利根川べりの田舎からであった。当分ここにいるから、土曜から日曜へかけてでも、将棋を差しに来ないか。鶏位なら御馳走するから、というのである。それは、三造の高等学校を卒業する年で、ちょうどその少し前に、彼は、学校で蹴球(アソシエーション)をしていて、顔を蹴られ、顔中繃帯をして病院へ通っていたのであった。実際間の抜けた話ではあるが、上から落ちてくる球をヘッディングしようとして、ちょっと頭をさげた途端に、その同じ球を狙った足に、下から眼のあたりをしたたか蹴られたのである。眼鏡の硝子は微塵に砕けて、瞬間はっとつぶった彼の眼の裏には赤黒い渦のような影像がはげしく廻転した。やられた! と思って、動かすと目の中が切れるかもしれないとは考えながら、でも、ちょっと試す気で細目に瞼をあけようとすると、血がべったりと塞いでいて、少し動くとぽたりと地面に垂れた。それから二人の友人にかかえられてすぐに大学病院へ行った。