轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
そう言われて、私も、はっと思い当り、
「卵の母親?」
と口に出して言ってしまった。
「そう、そうよ」
お母さまのお声は、かすれていた。
私たちは手をとり合って、息をつめ、黙ってその蛇を見護った。石の上に、物憂げにうずくまっていた蛇は、よろめくようにまた動きはじめ、そうして力弱そうに石段を横切り、かきつばたのほうに這入って行った。
「けさから、お庭を歩きまわっていたのよ」
と私が小声で申し上げたら、お母さまは、溜息をついてくたりと椅子に坐り込んでおしまいになって、
「そうでしょう? 卵を捜しているのですよ。可哀そうに」
と沈んだ声でおっしゃった。
私は仕方なく、ふふと笑った。
夕日がお母さまのお顔に当って、お母さまのお眼が青いくらいに光って見えて、その幽かに怒りを帯びたようなお顔は、飛びつきたいほどに美しかった。そうして、私は、ああ、お母さまのお顔は、さっきのあの悲しい蛇に、どこか似ていらっしゃる、と思った。そうして私の胸の中に住む蝮みたいにごろごろして醜い蛇が、この悲しみが深くて美しい美しい母蛇をいつか、食い殺してしまうのではなかろうかと、なぜだか、なぜだか、そんな気がした。