轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しゃよう
斜陽
「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页
「夏の花が好きなひとは、夏に死ぬっていうけれども、本当かしら」
きょうもお母さまは、私の畑仕事をじっと見ていらして、ふいとそんな事をおっしゃった。私は黙っておナスに水をやっていた。ああ、そういえば、もう初夏だ。
「私は、ねむの花が好きなんだけれども、ここのお庭には、一本も無いのね」
と、お母さまは、また、しずかにおっしゃる。
「夾竹桃がたくさんあるじゃないの」
私は、わざと、つっけんどんな口調で言った。
「あれは、きらいなの。夏の花は、たいていすきだけど、あれは、おきゃんすぎて」
「私なら薔薇がいいな。だけど、あれは四季咲きだから、薔薇の好きなひとは、春に死んで、夏に死んで、秋に死んで、冬に死んで、四度も死に直さなければいけないの?」
二人、笑った。
「すこし、休まない?」
とお母さまは、なおお笑いになりながら、
「きょうは、ちょっとかず子さんと相談したい事があるの」
「なあに? 死ぬお話なんかは、まっぴらよ」
私はお母さまの後について行って、藤棚の下のベンチに並んで腰をおろした。藤の花はもう終って、やわらかな午後の日ざしが、その葉をとおして私たちの膝の上に落ち、私たちの膝をみどりいろに染めた。