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しゃよう

斜陽

太宰 治

「新潮 第四十四巻第七号~第十号」1947(昭和22)年7月1日~1947(昭和22)年10月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,822 字 · 176 页

青空文庫

かず子がいないと、死んでしまうとおっしゃったじゃないの。だから、それだから、かず子は、どこへも行かずに、お母さまのお傍にいて、こうして地下足袋をはいて、お母さまにおいしいお野菜をあげたいと、そればっかり考えているのに、直治が帰って来るとお聞きになったら、急に私を邪魔にして、宮様の女中に行けなんて、あんまりだわ、あんまりだわ」

自分でも、ひどい事を口走ると思いながら、言葉が別の生き物のように、どうしてもとまらないのだ。

「貧乏になって、お金が無くなったら、私たちの着物を売ったらいいじゃないの。このお家も、売ってしまったら、いいじゃないの。私には、何だって出来るわよ。この村の役場の女事務員にだって何にだってなれるわよ。役場で使って下さらなかったら、ヨイトマケにだってなれるわよ。貧乏なんて、なんでもない。お母さまさえ、私を可愛がって下さったら、私は一生お母さまのお傍にいようとばかり考えていたのに、お母さまは、私よりも直治のほうが可愛いのね。出て行くわ。私は出て行く。どうせ私は、直治とは昔から性格が合わないのだから、三人一緒に暮していたら、お互いに不幸よ。