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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

03 第三分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 页

青空文庫

。――ところが今初めて、貴下の主君信長にその志があるのを聞く。敵とはいえ、天下万民のためには愉快である。

弾正は、そういって、

「左様な主君の旗下に働かるる貴公は、倖せ者である。侍と生れて、まことに、働きがいのあることであろう」

と、羨んだ。

藤吉郎はすかさず、

「信長の軍門に降を乞うと思わば武士の意気地もござろう。大義につきたまえ。大義の門に駒を繋ぐはまた、士道の本分でもあるまいか」

と、口を極めて、彼の降伏をすすめた。

「考えておこう」

遂に、弾正も、そこまで云い出したので、藤吉郎は、

「御出城あらばいつにても、藤吉郎が一命にかえて、君前へのお執りなしは仕る。ゆめ、犬死を召さるな」

と、その日は帰った。

帰ると信長に、

「数日を出ないうちに、山路弾正は開城して、自身ここの陣門に駒をつなぎましょう」

と、報告した。

果たして、その通りだった。弾正は、信長を訪ねて、北畠家の安泰を乞い、城兵の助命を願い出た。

そして、自身は、

「御成敗を賜わりたい」

と、神妙に死を乞うたが、信長はゆるして、即日、高岡の城を収めた。

軍功帳の第一に、藤吉郎の勲功が記録された。

その第二筆には、新参の明智十兵衛光秀の功が記された。