轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
「一名は、漸蔵主。もう一名の者は、武藤清左衛門とか」
「そうそう、そういったかな。特に、他国の説客にまで選ばれたくらいな人間。いずれ小智慧や舌巧者なやつどもであろう。上方表へ立ち帰り、これを意趣に、当家のことを悪しざまにざん訴されても困る。伊木、何とかしておけやい」
「かしこまりました。御出陣のあとで、牢より出して充分に馳走し、木戸を守る者の間違い事と詫びて、あとの祟りのないように、歓ばせて放しますゆえ、御懸念なく」
「うむ」
と、軽くうなずき捨てて、床几から立ち上がったとき、発足の時刻もちょうど、勢揃いもととのいましたと、表から告げて来た。
堂々、出陣を宣して立つ場合ならば、貝を用い、旗鼓をさかんにして、城下をくり出すところだが、わざと三々五々、騎馬を散らし、歩兵を前後し、旗を巻き火器をしのばせつつ発したのである。春三月の宵はおぼろおぼろ、何が起ったのかと、町の者がふりむいても、さだかに出陣とは思えなかった。
大垣を去ること三里ばかり、岐阜城下の茜部ノ原で、
「やすめ――」
と令して、前後になった手勢をここに集結した。そして夜半の空腹にそなえて早兵糧をつかい、なお、明朝の一食分を、腰兵糧に持てとふれ廻した。