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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
彼らは健康で勤勉でそれぞれ生活を工夫し、この新府の地に希望をつないで住んでいるにちがいない。それはここの中心をなす新しい城への信頼と支持でなくて何であろう。――勝てる。こんども勝てる。秀吉は将来をそう卜した。
当夜は、枚方に宿営。――翌早暁から三万の兵馬はまた淀の河流にそって蜿蜒と東下した。
そして伏見近辺までくると、淀川の渡しに、およそ四百ほどな人数が迎えに出ていた。
「あれや、たれの旗か?」
諸将はあやしんで眼をこらした。
たれとも知れず、赤地に黒く大一、大万、大吉と書いた大のぼりを立て、五本金のふきぬき、馬じるし、金の団扇に九曜の小馬じるしをかかげ、騎馬武者三十、長槍三十本、鉄砲三十挺、弓二十張、そのほか徒士武者一団、華やかに、川風に戦がれながら、まんまるに、かたまっていた。
秀吉も見て、使番の平塚太郎兵衛に、
「行って、質して来い」
と、走らせた。
太郎兵衛はすぐ駈け戻って来て、
「石田佐吉でした」
と、報じた。
秀吉はかろく鞍つぼをたたいて、
「佐吉か。さてさて。佐吉のはずだわ」
と、何か思い当ったらしく、機嫌のいい感声を放った。
近づくほどに、石田佐吉が、やがて馬前へあいさつに来た。