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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
(ほぼ予見は中った――)
と思うのである。
つねに出脚の迅い秀吉が、容易に立ち上がりを見せないのは、その主力を、伊勢へさし向けるか、この濃尾へ東下してくるか、それが大きな懸念であったところだ。
が、なお、岐阜まででは、いつその颱風路を急角度に変えないものでもない。家康は、次の諜報を待った。
「筑前。木曾川に船橋を架け、犬山へ入城したもようです」
二十七日のたそがれ、それを確かめ得た。さらば、という家康の面持ちだった。夜をかけて出戦の準備は成った。留守となる清洲には、その本丸に内藤信成を。二の丸に、三宅康貞、大沢基宿、中安長安の諸将をとどめ、二十八日、旗鼓さわやかに、小牧山へ進出した。
信雄も、いちど長島へ帰っていたが、報をうけて、即日、小牧山へいそぎ、徳川軍と会同した。
家康は、出迎えるつもりでいた。
なにかの手ちがいで、それがなかった。
姿が見えなければ、来いといって、呼べばよいのに、人のよい信雄は、着くやいな、みずから家康の営所へ行って、取るものも取りあえず駈けつけて来たことなど語って、
「筑前の兵力は、ここだけでも八万余。各所の軍勢をあわせると、十五万を超えるであろうと聞きました。