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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
――すぐ板にしたためて、陣々へ配れ」
こう命じた秀吉は、それでもまだ腹がいえないように、
「筒井伊賀、滝川儀太夫」
と、居合わす将士をよびたてて、自身、出撃の令を出した。
「憎ッくき数正の振舞じゃ。汝らは、遊軍となって、数正の陣の前面にある味方をたすけ、夜をとおして、攻めたてい。あすも攻めい。あすの夜も、攻めに攻めて、数正めに、息つかすな」
さらに、また、
「一ノ瀬仁右衛門。夕賀宗十郎、山内猪右衛門」
などと、屈強の者を選びよんで、同じように、手勢六百、七百とさずけては、前線へ駈け向わせた。
こうした後で、
「湯漬。湯漬を」
と、さいそくして、夕方の食事をいそがせた。どんな時も、かれは、飯をくうことを忘れない。
於通が、給仕につく。
飯のあいだにも、黄母衣の武者が、犬山との聯絡に、ひんぱんな往復をつづけていた。
――そして、さいごの使者が、池田勝入の報告をつたえて来たとき、
「……よし」
と、ひとりつぶやいて、飯のあとの白湯を、気長に飲み終った。
宵になると、小銃の音が、後方のこの本陣まで、豆をいるように遠く聞えてきた。
「怖くないか」
於通へ、いった。
於通は、笑って、