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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
10 第十分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页
「この世のおもい出を共にいたそう」
と、決死行に加わった。
あわせて、六百に足らない小人数であったが、平八郎の意気は、小牧を出るときから、乾坤を呑んでいた。二万の敵軍何ものぞ、一猿面公、何するものぞ、という気概だった。
歩兵は、軽装とし、旗は巻かせ、馬にムチ打って、一団の砂けむりは、つむじのように、東へ駈けた。
そして、龍泉寺川の南の岸へ出たとき、秀吉の大軍が、その北岸を、流れにそって、続々、下ってゆくのに追いついた。
「おう、あれこそ」
「金瓢の馬じるし」
「群れ立ってゆく旗本どものなかにこそ、秀吉はいるにちがいない」
平八郎以下、息もつかずに、ここまで来て、一川を中に、対岸をながめた士卒は、騒然と、指さしたり、小手をかざして、武者ぶるいした。
おおーい、と呼べば、おおーい、と敵からの声もとどいて来そうな距離である。その敵の顔顔顔、二万の足音にまじる無数の馬蹄のひびき。それも、川をこえて、こっちの胸へこたえて来る。
「左衛門、左衛門」
平八郎は、うしろから来る馬上の石川康通へ呼びかけた。
「おウい、なんじゃ、平八」
「左衛門。対岸を見たか」
「いや、おびただしい大兵じゃの。