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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

10 第十分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 176,911 字 · 353 页

青空文庫

「ま。見てくれい」

と、いうのである。そして、

「御辺は、築城にも精しいと聞く。何ぞ、心づきもあらば、遠慮のう申してくれい」

ともいって、その設計の批判を、数正に求めるのだった。

原図は、そこの茶室一ぱいにもなる大きさだった。いわれた通り、数正は、築城土木には、多少造詣もあり、興味も持っていたので、普通なら、秘中の秘として、他国の使臣などには、絶対に示すものでないものを、秀吉が、どういう心意で自分に見せるかの疑いはまず措いて……

「では、拝見させて戴きまする」

と、絵図の上へ、身を伸ばして、見入った。

「…………」

秀吉のやること、およそ小さな規模ではあるまいと、予想していた数正も、つぶさに辿り見るに従って、その構想の大と、用意の深遠には、まったく気をのまれた容子だった。

「ははあ」

とのみ、何度も唸いて、図中の夢に囚われ去っていた。

彼が、思い出すのに――

かつて、本願寺の根拠であった頃には、方八町の城廓であったが――いま、この設計図を見るに、その方八町は、わずか本丸の一基礎となっているに過ぎない。

そして、その周辺の四川山海の自然を悉く取入れて、景勝を按じ、攻守の難易、経営の利害を考え、兵馬の出入、車馬舟楫の利便に応じ、本丸、山里丸、二の丸、三の丸などのほか、べつに馬出しと総曲輪を構え――これらを囲繞する外廓