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あかいろうそく

新美南吉童話集

新美 南吉

新美南吉『新美南吉童話集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤い蝋燭、ごん狐、狐、おじいさんのランプ、手袋を買いに、最後の胡弓弾き、童話における物語性の喪失。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 46,131 字 · 96 页

青空文庫

腹がへっては勝はとれぬから、もう仕方がない、横丁にでもはいって家のかげで食べようと話をきめたとき、二人は大きい門構えの家の前を通りかかった。そこには立派な門松が立ててあり、門の片方の柱には、味噌溜と大きく書かれた木の札がかかっていた。黒い板塀で囲まれた屋敷は広くて、倉のようなものが三つもあった。

「あ、ここだ、ここは去年五銭くれたぞ」と松次郎がいった。で二人は、そこをもう一軒すましてから弁当をとることにした。

木之助が先になってはいってゆくと、

「う、う、う……」と低く唸る声がした。木之助はぎくりとした。犬が大嫌いだったのだ。

「松つあん、さきいってくれや」と松次郎に嘆願すると、

「胡弓がさきにはいってかにゃ、出来んじゃねえか」と答えた。松次郎も怖かったのに違いない。

木之助は虎の尾でもふむように、びくびくしながら玄関の方へ近づいてゆくと、足はまた自然にとまってしまった。大きな赤犬が、入口の用水桶の下にうずくまってこちらを見ているのだった。

「松つあん、さき行ってや」と木之助は泣きそうになっていった。

「馬鹿、胡弓がさき行くじゃねえか」と松次郎は吐き出すようにいったが、松次郎の眼も恐ろしそうに犬の方を見ていた。