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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊涼風特別号」1954(昭和29)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,297 字 · 56 页

青空文庫

井坂十郎太らしい。菅田平野はそっと引戸をあけて、名を呼んだ。

「ああ、無事でしたか」と十郎太が寄って来た、「――中がまっ暗だものでなにかあったのかと思いました」

「ありましたよ、しかしそっちの首尾は」

「みんな来ました」

十郎太はうしろへ振返って手を振った。そうして、暗がりからあらわれた五人の若侍といっしょに、すばやく小屋の中へ入って、引戸を閉めた。

「燧袋を出して下さい」と菅田平野が云った、「――さっきちょいとした事があって提灯を消したんです、ああ、そこに人間が転がってますから気をつけて下さい」

五人のなかの一人が燧袋を出した。

菅田平野は出来事を語りながら提灯をつけ、それで片隅を照らしてみせた。うしろ手に縛られ、猿轡を噛まされて、二人の侍が転がっていた。手を縛ってあるのはかれら自身の刀の下緒だし、口に詰めこんだのは乾し草であった。二人ともすでに息をふき返し恐怖の眼をいっぱいにみはって、こちらを見あげていた。

「二人もですか」と十郎太が云った。

「べつべつにですよ」と菅田平野が答えた、「――第一号はそっちの痩せたほうで、こっちのは半刻ばかりおくれて来たんです、きっと第一号が見廻りに出たまま戻らないので、捜しに来たんでしょうな」