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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊涼風特別号」1954(昭和29)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,297 字 · 56 页

青空文庫

――育ちが違うんだな、と菅田平野は思った。これはのんびりどころではない、むしろみやびた趣きというのだろう。

――これは一家そろって日日平安だ。

菅田平野は心の中でそうつぶやいた。

母娘の対話は、帰って来た寺田たちによって中断された。かれらはやや強い降りになった雨の中を、首尾よく捕えた正門の二人を曳いて戻った。用心のためあとへ保川英之助を残したそうであるが、これで邸内にいた敵の見張りは全部押えたわけで、七人のうち一人は前林家の小者、他の六人はみな黒藤源太夫の家士であった。――菅田平野は密告書を書くために、料紙をひろげながら「みんなの集まる(仮定の)場所はどこにするか」と訊いた。あまり遠くても近くてもいけない、城下町からほぼ一里くらいの距離で、なるべくなら寺がいい。こういう条件で十郎太と寺田文治が相談し、大里村の光明寺がよかろうということになった。

「光明寺なら約一里」と十郎太が云った、「昨日私たちの通って来た、石鉢山の向うです」

菅田平野は書きはじめた。

十郎太は押籠められている家士たちを解放しにゆき、こいそは(やはり禁足されている)小者や召使たちに知らせて、朝食の支度をさせるために出ていった。