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にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

「サンデー毎日臨時増刊涼風特別号」1954(昭和29)年7月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,297 字 · 56 页

青空文庫

「それもわかるが、私には貴方の怒る気持もわかるなあ」

「われわれは日日平安などと云ってはいられない、ものには限度ということがある」十郎太は眼をぎらぎらさせた、「――かれらがそんなにも無恥陋劣で、その悪徳非道にとめどがないとすれば、これを抑える法は一つしかないでしょう、私はそう決心した、私の決心に賛成する者が九人、それぞれが持場を分担して、事を決行しようとしたのです」

「それが事前に露顕したわけですか」

「いや、かれらにではなく、伯父に勘づかれたんです、もっとも詳しいことは知らないでしょう、なにか不穏な事を計画しているという点だけ勘づいて、それで急に江戸へ帰れということになったんだと思う」十郎太は怒りと嘲笑とでむかつくような顔をし、それから投げやりな調子で云った、「――そっちがそう出るなら結構、私はたって千鳥の婿になんかなりたかあないですからね、江戸へ帰ってみんなぶちまけて、もちろん、殿に直訴しますよ、そうしてこの世にはまだ正義というものがあるんだということを、かれらに思い知らせてやるつもりです」

菅田平野は考え深そうに頷いた。

風呂へはいったとき、菅田平野は(十郎太の剃刀を借りて)月代と髭を剃ったから、いま彼の顔はさっぱりと清潔にみえる。