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にほんのでんせつ

日本の伝説

柳田 国男

「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页

青空文庫

そうして見ると蘇我入鹿を祀るよりも前から、もう山と山との争いはあったので、その争いに負けた方の山の頭が、飛んだという点も羽後の飛島、或は常陸の石那阪の山の岩などと、同様であったのであります。どうしてこんな伝説がそこにもここにもあるのか。そのわけはまだくわしく説明することが出来ませんが、ことによると負けるには負けたけれども、それは武蔵坊弁慶が牛若丸だけに降参したようなもので、負けた方も決して平凡な山ではなかったと、考えていた人が多かった為かも知れません。ともかくも山と山との背くらべは、いつでも至って際どい勝ち負けでありました。それだから人は二等になった山をも軽蔑しなかったのであります。日向の飯野郷というところでは、高さ五尋ほどの岩が野原の真中にあって、それを立石権現と名づけて拝んでおりました。そこから遠くに見える狗留孫山の絶頂に、卒都婆石、観音石という二つの大岩が並んでいて、昔はその高さが二つ全く同じであったのが、後に観音石の頸が折れて、神力をもって飛んでこの野に来て立った。それ故に今では低くなりましたけれども、人はかえってこの観音石の頭を拝んでいるのであります。