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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
それから美しい沼が田になり、見事な大木が枯れて片付けられてしまうと、当分はそのうわさをすることがかえって多いけれども、後に生れた者には感じが薄いので、おいおいに忘れて行くようになるのであります。村などはこのために大分さびしくなりました。
伝説は、今までかなり久しい間、子供ばかりをきき手にして話されておりました。尤も大人も脇にいてきいてはいるのですが、大抵はおさらいをするおりがないために、子供のように永く記憶して、ずっと後になってから、また他の人に話してやる程に、熱心にはならなかったのであります。子供のおさらいは、その木の下で遊び、またはみんなと連れだって、その岩の前や淵の上、池の堤をただ通って行くことでありました。話は不得手だから誰もくわしくは話しませんが、その度毎に一同は前にきいたことを想い出して、暫くは同じような心持ちになって、互に眼を見合うのであります。人が年を取って話をすることが好きになり、また上手になって後に、昔のことだといってきかせる話は、大方は、こうした少年の頃に、覚えこんだ話だけでありました。だからどんな老人の教えてくれる伝説にも、必ずある時代の児童が関係しております。