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にほんのでんせつ
日本の伝説
柳田 国男
「日本神話伝説集」日本児童文庫、アルス、1929(昭和4)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,931 字 · 207 页
それで大きな草履を片方だけ造って、山の神様に上げる風習などもありました。冬のま中に山から里へ、おりおりは下りて来られることもあるといって、雪は却ってその足跡を見せたものでありました。後に仏教がはいってからこれを信ずる者が少くなり、ただ子供たちのおそろしがる神になった末に、だんだんにおちぶれてお化けの中に算えられるようになりましたが、もとはギリシャやスカンジナビヤの、古い尊い神々も同じように、われわれの山の神も足一つで、また眼一つであったのであります。それとこれとは関係はないかも知れませんが、とにかく十一月二十三日の晩に国中の村々を巡り、小豆の粥をもって祭られていたのは、だだの人間の偉い人ではなかったのであります。それをわれわれの口の言葉で、ただだいし様と呼んでいたのを、文字を知る人たちが弘法大師かと思っただけであります。
だいしはもし漢字を宛てるならば、大子と書くのが正しいのであろうと思います。もとはおおごといって大きな子、すなわち長男という意味でありましたが、漢字の音で呼ぶようになってからは、だんだんに神と尊い方のお子様の他には使わぬことになり、それも後にはたいしといって、殆ど聖徳太子ばかりをさすようになってしまいました。