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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

と、都合の好いことばかり云った。

老人は面倒なことが起ったわいと思ったが、店子のことであるから知らない顔をするわけには往かない。そこで主翁を上へあげ、小八を呼びにやって別室でその事情を聞いた。

「女を伴れて来たのはほんとうですが、彼奴はひどい奴ですぜ」と、云って小八は亡者宿の悪事をすっぱ抜いて、「だから、私も男の意地だ、骨が舎利になっても女を返さないつもりでげす」

老人も小八の云うことがもっともだと思った。で、主翁と小八と顔をあわさして主翁に向って云った。

「女には金もかかっているだろうが、お前さんも小八を騙した弱みもあるだろう、諦めて女を小八にやったらどうだな」

「亡者を抱えて客を騙すなぞとは、そりゃ、小八さんの云いがかりじゃ、私は正道な道を踏んでいる宿屋家業の者じゃ」と、主翁は云った。

「やい、この騙奴、よくも、よくも、そんなことが云えたものだ、やい、手前がいくらそんなことを云って、ごまかそうとしたって、乃公の方には証人があるぜ」と、小八は怒鳴りつけた。

「どんな証人があるか知らないが、私の方には知らないことじゃ、そんなことより、女を渡してもらいましょうか」