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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

と、女は力なさそうに云った。

悪い感じのしない可哀そうに思われる女であったが、見ず知らずの一人旅の者を泊めることは憚られた。

「私は泊めてあげたいが、見ず知らずの者を泊めると、大屋さんがやかましいから、籠ででも送ってあげよう、お前さんは何処ですかい」

「私は遠い在の者ですから、籠と申しましても、むずかしゅうございます」と、云って懐から銭をだして、「これを宿賃にあげますから、どうぞ一晩泊めてくださいまし」

銭は三分あった。甚九郎は一晩位なら泊めてやっても好いと思いだした。

「見られるとおりの住居だから、着るものも何もないが、それでよければ、泊っておいで」

女は悦んで上にあがった。甚九郎は持合せの薬を飲まし粥を炊いてやって喫わせなどした。女の病気は次第に収まって、やがて甚九郎の分けて着せた蒲団に包まって、微暗い行灯の下ですやすやと眠った。

朝起きると甚九郎は茶を沸かしはじめた。女もその後から起きて来て甚九郎の傍へ坐った。女は好い色沢をしていた。

「お陰様で体がさっぱりいたしました、どうもありがとうございました」

「体がよくなったら何よりだ、お前さんは何処だね」