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かにのかい

日本の怪談(二)

田中 貢太郎

田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页

青空文庫

一座の話は蛇を打った話で持ちきっていた。

「何しろ、話には聞いておったが、見たことは初めてだ」

と、一人が云うと、

「こりゃあ、孫子への話の種じゃよ」とまた一人が云った。

「そんなに大きくはないと思うて、往ってみると瀑壺に一ぱいになっておったから驚いたよ」と、云ったのは彼の親類の男であった。

篠原の主人はにこにこして自己を嘆美する皆の話に耳をやっていた。

「やっぱりあんな魔物を打つには、此処な親爺じゃないと打てないよ」と、親類の男が云った。

「そうとも、此処な親爺は、どしょう骨がすわっておるからな」と、一人の男が云って篠原の主人の顔を見た。

「はははは」篠原の主人は盃を持ったなりに対手の男を見かえしたところで、眼の前に黒い閃きがするように思ったが、忽ち背後にひっくりかえった。

もう酒どころではなかった。人びとは起ちあがって主人を介抱しようとした。主人は寄って来る人びとの手を払い除けて、

「あれ、あれ、あれ」と、云って室の中をのたうって廻った。

人びとの顔には恐怖がのぼっていた。主人は仰向けになったり俯向けになったりして悶掻き苦しんだ。

「あれ、あれ、あれ、あれ」