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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页
彼はそう思いつくと、入水する人のすると云うように、穿いていた草履を水際に並べて置いて、西安寺と云う寺のある方へ往ってしまった。
後で眼を覚した女は、売卜者のいないのに吃驚して、家の中を探していると、売卜者の開けて往った雨戸がそのままになっていた。女は直ぐ己が醜いから男が逃げたものだと思った。彼女は狂人のようになって戸外へ出て、其処此処と探し、その夜の明け方、小浜村の水際へ往った。其処には己の家の草履が揃えて脱いであった。女は男が己を厭うて死んだものだと思った。彼女は突然水の中へ飛び込んでしまった。
哀れな女の死骸は銚子の川口へ流れ着いた。村の人は憐んでその死骸を収め、女の歯と頭髪にさしていた花櫛をその脇に埋めて神として祭った。銚子町の東端、円福寺の背後になった丘上にある川口明神と云うのがそれだ。俗にはそれを白紙明神と云っている。もとは歯櫛明神であったが、何時の比からか誤ったものと見える。土地の人は女の因縁から、頭髪の縮れている者は櫛をあげ、顔面に腫物の出た者は、紅白粉を収めて祈願をすることになっているが、それが験があると云われている。伝説では女の名を延命姫、売卜者の名を安部晴明としてある。