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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
田中貢太郎『日本の怪談(二)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:蟹の怪、花の咲く比、不動像の行方、蛇怨、鮭の祟、妖怪記、鍛冶の母、鷲、尼になった老婆、幻術、忘恩、蠅供養、這って来る紐、放生津物語、地獄の使、法衣、餅を喫う、立山の亡者宿、山の怪、山姑の怪。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 80,664 字 · 171 页
ぼろぼろの法衣を着た、痩せて銀のような腮鬚を生やした旅僧が立って念仏を唱えていた。
「お坊さん、茶もおいりようなら、茶も沸いております」
お作は黍の餅をさしだしながら云った。旅僧はその餅を受けて首にかけた麻のずだ袋に収め、それから欠椀を出した。
「お気の毒じゃが、それでは、お茶を一ぱいいただきたい」
お作は欠椀にお茶を汲んで来た。
「これはかたじけない」
旅僧は押し戴いてその茶を旨そうに飲んだが、飲みながらお作の顔を見て云った。
「お前さんは、この比魔物にくるしめられておると見えるな」
お作は驚いた。
「はい、不思議なことがございまして、恐ろしゅうて恐ろしゅうて、今日はこれから、親類の処へ往って、お加持を頼みたいと思うておるところでございます」
「そうだろう、魔物が来て憑いておるが、心配することはない、私がはろうてしんぜよう」
「これは、どうもありがとうございます」
「じゃ、私を地炉へ案内してくだされ、はろうてしんぜる」
お作は旅僧を案内して庖厨の土間へ入った。旅僧はずだ袋の中から赤い小さな紙片を二三枚出して、何か唱えながらそれを地炉の火に入れた。家の中の空気が銀線を張ったようにぴんとなったかと思うと、急に風の吹くような音がしだした。