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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

こうやって現実の代りに「意味の世界」が出現する。現実界はわずかに、この「意味の世界」にあて篏まる限りに於て、意味の御都合に従って、取り上げられ解釈されるだけである。――之が解釈哲学に於ける所謂「解釈」のメカニズムなのだ。ここで天才的(?)想像力や警抜や着想や洞察と見えるものは、実は狂奔観念や安直な観念連合や、又安易で皮相な推論でしかなかったのである。

こうした繊細な弱点も、ごく卑俗な形のものは誰でも容易に気がつくことだ。近年日本に於ても自殺者は非常に殖えて来たようであるが、そのどれもが、新聞記事によると甚だ穿った解釈を与えられている。哲学に凝ったというのは古いからまだしもとして、最も斬新なのには、父親が〔共産党〕に加わっていたために娘が自殺した、というような種類の解釈もある。蓋し新聞にとっては事実そのものはどうでもいいので、記事が記事として独立な意味を有てさえしたらいいのだ。――併し、この弱点も哲学という甲兜の内に隠れると、取りも直さず解釈の哲学になるので、そうなるとこの弱点も容易にボロを出そうとはしなくなる。一方そこには荘重な名辞と厳めしい語調がある。