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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

そういう読者とは併し何であったか。暫く前迄わが国を風靡していたロマン的な読者なのである。この種類の読者にあっては、意味の深長さは賞嘆に値いしても、客観的現実事物の物質的必然性は一向心を動かすに足りないものである。だからこういう読者を大向とする西田哲学はロマンティークのものだと云ったのである。尤も最近の西田哲学はロマン派的・美学的な外的色彩をやや失ったように見えるが、それは却ってロマン派的・美学的・な方法――意味影像の世界の組織立て方――が確立されたからであって、そしてそれが取りも直さず左右田博士によって「西田哲学」と呼び始められたものだったのである。――かつて田辺博士は西田哲学をゴチックの伽藍にたとえたが、ロマンティークの末勢が中世の闇の中に後退して行った点でも考えない限りこの形容は賛成出来ない。西田哲学はそういう封建的な持ち味のものではない。それはもはや尖端的ではなくなった処の、併し云わばモダーンな哲学なのである。

西田哲学がブルジョア哲学である所以の特色、それから、従って又それが有つ弱点と考えられる点、を大体述べた。それは本質上ロマン派的な哲学であった。