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にほんイデオロギーろん

日本イデオロギー論

戸坂 潤

――現代日本に於ける日本主義・ファシズム・自由主義・思想の批判

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 263,376 字 · 511 页

青空文庫

だから之は実を云えば流言蜚語ではなかったので、夫が流言蜚語だ、というデマゴギーが新しく〔支配階級〕から発布されたということに他ならない。でこうして事実上、大衆はその一通りの被デマゴギー性の残滓にも拘らず、大体に於て、悟性的な政治的見解を持てるものだと想定する理由が、デモクラシー乃至自由主義の側にあるわけなのだ。少くとも大衆は真理に近いものを語ることが出来る、というのである。

今回〔一九三九年〕の総選挙の事例はこの点を裏書きするように見える。所謂非常時の呼び声にも拘らず、社会の一般通念では一応非常時主義に反対するものと考えられている無産派の議員が、その絶対数を問わないとすれば、たしかに眼立って進出した。之に反して日本主義的代議士候補者は一二の例外を除いて悉く失敗した。之はデモクラシー的大衆の悟性を物語るものだ、と考えられる。悟性による被説得力が大衆の内に発育しつつあるとも考えられるのである。或る者は之を政治教育の成功の結果だと云い、又或る者は之を新官僚的粛正選挙のおかげだと云う。慥かに一応そうであるに相違ないだろう。

だが、之だけの現象を基礎にして、機械的概念であるこの大衆を買い被ることは、甚だ危険なことだ。