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あねがわのかっせん

日本合戦譚

菊池 寛

菊池寛『日本合戦譚』。同一底本的分册已合并为一书。收入:姉川合戦、厳島合戦、川中島合戦、田原坂合戦、長篠合戦、賤ヶ岳合戦、碧蹄館の戦、島原の乱、山崎合戦、鳥羽伏見の戦、大阪夏之陣、真田幸村、応仁の乱、四条畷の戦、小田原陣。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 154,771 字 · 313 页

青空文庫

家康いたく喜ばれ「真田ほどの者が旗を棄てたるはよくよくのことよ」と御褒めになり、その旗を家宝にせよとて、傍の尾張義直卿に進ぜられた。

義直卿は、おし頂いてその旗をよく見たが、顔色変り「これは家宝にはなりませぬ」と言う。

家康もまた、よく見れば、旗の隅に細字で、小さく「棄旗」と書いてあった。「実に武略の人よ」と家康は、讃嘆したとあるが、これは些かテレ隠しであったろう。

寄手の軍が、こんな朱敗を重ねてぐずぐずしている間に、幸村は軍を勝曼院の前から石之華表の西迄三隊に備え、旗馬印を竜粧に押立てていた。

殺気天を衝き、黒雲の巻上るが如し、という概があった。

陽も上るに及んで、愈々合戦の開かれんとする時、幸村は一子大助を呼んで、「汝は城に還りて、君が御生害を見届け後果つべし」と言った。が、大助は「そのことは譜代の近習にまかせて置けばよいではないか」と、仲々聴かなかった。そして、「あく迄父の最期を見届けたい」と言うのをなだめ賺して、やっと城中に帰らせた。

幸村は、大助の背姿を見、「昨日誉田にて痛手を負いしが、よわる体も見えず、あの分なら最後に人にも笑われじ、心安し」