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にほんふどうき

日本婦道記

山本 周五郎

二十三年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,170 字 · 22 页

青空文庫

こういう意味を繰返し云って聞かせた、するとおかやは、「ではせめて坊さまが立ち歩きをなさるようになるまで……」と云いだし、どうしても聞分けようとしないのである、それでどうにも法が尽きて兄の多助を呼んだのであった。

「さようでございますか、よくわかりました」始終の話を聞いて、多助はひどく律義に幾たびも頭を下げた、「……そういうことでしたら、私からもういちどよく申し聞かせましょう、幸い今ひとつ縁談もあることでございますから」「それならなお更のことだ、然し叱ったり無理押し付けでなく、よく納得のゆくように申し訓して呉れ」「できるだけ思召しのように致します」そう答えて多助は座を立った。

多助の訓し方がよかったのか、それともようやく諦めがついたものか、こんどはおかやは案外すなおに云うことを肯いた。そして、「ながい御道中ではあり寒さに向かいますから、坊さまのお肌着を少し余分にお作り申しましょう」と云い、それから数日のあいだまめまめと縫い物や洗濯に精をだすのだった。……もう悲しそうなそぶりはみせなかった、針を運びながら側に寝かせてある牧二郎をあやす言葉など、蔭で聞いていると寧ろ浮き浮きしている者のようにさえ感じられた、――これでいい、靱負はそう頷いてほっとしたのであった。