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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

坂口安吾『日本文化私観 坂口安吾エッセイ選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:FARCE に就て、神童でなかったラムボオの詩、花田清輝論、スタンダアルの文体、大阪の反逆。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 页

青空文庫

かと思うと、ほかの人がバカに見えて自分が引立つようなところも在るけれども、それが織田の目的ではないので、織田の狙いは、純一に、読者を面白がらせる、というところにあるのである。だから、この書き加えは、文学の本質的な理論にふれたものではなく、ただ世俗的な面白さ、興味、読者が笑うようなことばかり、そういう効果を考えているのである。

理論は理論でちゃんと言っているのだから、その合いの手に、時々読者を笑わせたところで、それによって理論自体が軽薄になるべきものではないのだから、ちょっと一行加筆して読者をよろこばせることができるなら、加筆して悪かろう筈はない。

織田のこの徹底した戯作根性は見上げたものだ。永井荷風先生など、自ら戯作者を号しているが、凡そかかる戯作者の真骨頂たる根性はその魂に具わってはおらぬ。東綺譚に於ける、他の低さ、俗を笑い、自らを高しとする、それが荷風の精神であり、彼は戯作者を衒い、戯作者を冒涜する俗人であり、即ち自ら高しとするところに文学の境地はあり得ない。なぜなら、文学は、自分を通して、全人間のものであり、全人間の苦悩なのだから。

江戸の精神、江戸趣味と称する通人の魂の型は概ね荷風の流儀で、俗を笑い、古きを尊び懐しんで新しきものを軽薄とし、自分のみを高しとする。