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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

坂口安吾『日本文化私観 坂口安吾エッセイ選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:FARCE に就て、神童でなかったラムボオの詩、花田清輝論、スタンダアルの文体、大阪の反逆。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 页

青空文庫

云々の精神と全く同一のものが、常に底に流れていて、鋭く彼等の作品に働きかけて来たように思われるのである。俳諧に於ける芭蕉の精神に於ても其れを見ることが出来るし、又、今この話の中心である戯作者達の作品を通しても、(狂言は無論のこと)、私は此の精神の甚だ強いものを汲み取ることが出来るのである。

尤も、この精神は、ひとり日本に於て見られるばかりではなく、欧洲に於ても、古典と称せられるものは概ね斯様な精神から創り出されたものであった。単なる写実というものは、理論ではなしに、理窟抜きの不文律として本来非芸術的なものと考えられ、誰からも採用されなかったのである。近世たまたま、芸術の分野にも理論が発達して理論から芸術を生み出そうとする傾向を生じ、新らしい何物かを探索して在来の芸術に新生面を附け加えようと努力した結果、自然主義の時代から、遂に単なる写実というものが、恰もそれが正常な芸術であるかのように横行しはじめたのであった。

この事は単に文学だけではなく、音楽に於ても、(私は音楽の知識は皆無に等しいものであるが、素人として一言することを許して頂ければ――)私は、近代の先達として、ドビュッシイの価値を決して低く見積りはしないが、しかも尚この偉大な先達が、恰かもそれが最も斬新な、正しい音楽であるかのように、全く反省するところ