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ファルスについて

日本文化私観 坂口安吾エッセイ選

坂口 安吾

坂口安吾『日本文化私観 坂口安吾エッセイ選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:FARCE に就て、神童でなかったラムボオの詩、花田清輝論、スタンダアルの文体、大阪の反逆。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,974 字 · 47 页

青空文庫

単なる写実は実物の前では意味を成さない。単なる写実、単なる説明を文学と呼ぶならば、文学は、宜しく音を説明するためには言葉を省いて音譜を挿み、蓄音機を挿み、風景の説明には又言葉を省いて写真を挿み、(超現実主義者、アンドレ・ブルトンの“Nadja”には後生大事に十数葉の写真を挿み込んでいる)、そして宜しく文学は、トーキーの出現と共に消えてなくなれ。単に、人生を描くためなら、地球に表紙をかぶせるのが一番正しい。

言葉には言葉の、音には音の、そして又色には色の、各々代用とは別な、もっと純粋な、絶対的な領域が有る筈である。

と言って、純粋な言葉とは言うものの、勿論言葉そのものとしては同一で、言葉そのものに二種類あると言うものではなく、代用に供せられる言葉のほかに純粋な言葉が有る筈のものではない。畢竟するに、言葉の純粋さというものは、全く一に、言葉を駆使する精神の高低に由るものであろう。高い精神から生み出され、選び出され、一つの角度を通して、代用としての言葉以上に高揚せられて表現された場合に、之を純粋な言葉と言うべきものであろう(文章の練達ということは、この高い精神に附随して一生の修業を賭ける問題であるから、この際、ここでは問題とならない)。