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にっき
日記
宮本 百合子
26 一九四三年(昭和十八年)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,562 字 · 16 页
と云いかけ「自分のを四十円もって、Hさんが三十円くれたの」「おやおやじゃ相当あったのね、よかった。Fさんはいくらもってった?」「三十円なの」と一種の顔する。
「あの人お金おとすのよ、十円札やなんかヒョイヒョイおとすから、あぶなくって仕様がないから、私皆あずかって出し入れをはっきりするので、相当厄介だった」自分はおもしろい人だと思って「ふーん、そういう人なの!」と云った。「じゃあの人ピーピーで写真かえなかったでしょう?」「あとから注文するって云ってたわ」けろりとしている。おそらくHにやるらしいゴッホの糸すぎの色ずりなんか、その他どっさり自分は買って、その袋何だか積極的に見せない。
「Fさんの引越したうちへ行って見た? 日当りのいい部屋だってね」
「ええでも先から知ってるの、とってもひどい階子よ」
倉敷で本を買って来て私に一冊くれ(代金こちらもち)あといく冊か「これはうちの」とかくすようにする。「一寸見せて」というとイーリンの『書物の歴史』などある。Fさんの妹たちにやる云々、何か自分いやな気の毒な気になる。「ああこれがあったの」と『書物の歴史』手にとると兢々とした眼している。