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めいあんよめもんどう

明暗嫁問答

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页

青空文庫

慎ましやかにかぶりを振って微笑する、まったく芸者などしていた女とは思えないあどけなさだった、そしてその微笑のしぶりが、そっくり直二郎と同じ感じだった、直二郎の笑い癖をそのまま写したようである、勘太夫はちょっと心を誘われた、そんな感化をうけるほど好きだったのかと思って、……しかしすぐに眉をしかめ、ふきげんに口をひき結んだ。

「したくもないことを、きげん取りの積りでするならたくさんだぞ、わしはおべんちゃらは大嫌いだ」

「あのうここに真柏の植わっております鉢は、白磁とか申すお品でございますか」

勘太夫の高調子には構わず、お笛はしずかにそう云ってふり仰いだ。やはり直二郎と同じ微笑をうかべた可愛い眼である、勘太夫は、むりにふきげんな顔をつくった。

「白磁とか青磁とか、そうひとからげに云われてはかなわん、それは白磁の内でも饒州の白といって、唐来の珍品だ」

「饒州の白、……有難う存じました」

「こっちのを見い」勘太夫はお笛を脇のほうへ伴れていった、「これは古備前物で了心の作だといわれる品だ、向うのは鉢、これは半胴という、饒州と比べてみて違いがわかるだろう、手に取って見るがよい」