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めいあんよめもんどう
明暗嫁問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页
からだだ、万一にも血統の濁るようなことがあったら、祖先に対して申しわけのしようがない」
「血統が濁ると仰しゃいますと」
「稼業がらそのほうの体が潔白であろうとは思えぬからな」
「潔白でございます」お笛はしずかに顔をあげた、
「十六で座敷へ出ましてから三年、ぬきさしならぬ場合も度たびございましたけれど、わたくしそれだけは命にかけて守りとおしてまいりました」
「あの世界で、そのほうの年になって、さようなことが許される筈はない」
「そのために、この一年ほどは直二郎さまにずいぶん無理なご心配をおかけしました、もしあの方がそうして下さいませんでしたら、仰しゃるとおり、今日のお笛ではいられなかったろうと存じます」
ははあと勘太夫は膝を打った、直二郎の金の用途がはじめてわかったのである、だが老人はなお冷やかに、「そのほうは口でそういうが、こればかりは証拠がないからな」と突き放すようなことを云った。お笛はきっとして老人を見た、そしてしずかな、けれどもどこかするどさのある調子でこう云いたした、
「失礼でございますが、貴方さまはひそかに殿さまを毒殺して、十万石のお家を横領しようという、ご野心をおもちでございましょう」