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めいあんよめもんどう
明暗嫁問答
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页
のだから、その頃はさぞあでやかなことだったろう。どれ、こちらへ向いてよく見せてくれ」
はいと云って羞らいながら、しかし悪びれたようすもなく、うっとりとした笑顔をこちらへ向けた。勘太夫はつと手を伸ばし、もっとこちらへまいれと云いながら、お笛の柔かい手首を握ってひきよせた。拒むかと思ったが、お笛はされるままに、いやむしろ嬉しそうに笑いながら、ずっとこちらへ凭れかかってきた。そのとき勘太夫はその握った手をとつぜん突き放し、がらっと態度を変えてするどく云った、
「お笛、このざまはなんだ、人眼のない部屋で男と酒を酌み、たとえ直二郎の伯父にもせよ、男のわしに手を取られて拒まぬのみか、さも嬉しげに身を寄せてくる、それが今まで身を潔白に持して来た女の態度か」
ああとお笛は色を変えた。
「二杯三杯の酒に性根が紊れ、前後を忘れてあらわした本性見届けたぞ」
「…………」お笛は崩れるようにそこへ両手を突き、ながいこと肩で息をしながら黙っていた、それからやがて低いこえで、
「恐れいりました」と消え入るように云った。
「初めからお計りあそばしたものなれば、今さらなにを申上げてもおとりあげはなさりますまい、けれど本性を見たという言葉について、ひと言だけ申上げたいと存じます」