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めいあんよめもんどう

明暗嫁問答

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館 、1946(昭和21)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,984 字 · 43 页

青空文庫

「云いわけなど聞くまでもないぞ」

「ただお聞き捨て下さいまし」お笛は顔を伏せたままこう云った、「直二郎さまからお聞き及びかとも存じますが、わたくし二歳のとき父に死なれ、母にも七歳で死なれました。父は越前家に仕えておりましたそうで、浪人してからは旧友を頼って御当地へまいり、馴れぬ賃仕事などでかつかつ暮しておりました、両親に死別しましてからは相い長屋の松造という人にひきとられ、十一の年まで育てて貰ったのでございます、その人には妻もなく左官の手間取りなどをして、ずいぶん貧しい暮しでございましたが、心はごく親切で、ことにやさしく世話をしてくれました、けれども松造どのに、長吉という息子が一人いまして、生れつきでございましょう、仕事というものをてんでせず、父親の稼ぐ金をせびっては、悪い仲間と家を外に遊びあるくという風でございました、わたくしが十四歳の秋のことです、松造どのが、普請場で怪我をして帰り、そのまま病床につくようになりますと、長吉はにわかに兄ぶったようすになり、養い親が医薬の代に困っているのだ、これまでの恩を返すつもりで云うことをきけと申し、わたくしを花むらへ売った