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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
そう自分に云いきかしてみても、それでハッキリ安心するというわけにはいかないのだった。どこと指摘はできないが、なんとなく秘密や陰謀が感じられてならないのだった。可哀そうな風守さま。光子は六年前の上京中の道中に稀に見かけた覆面の風守を痛ましく思いだすのであった。それは宿々の出発や到着時のカゴの出入に見かけただけであるが、覆面のみでなく長い黒マントのようなものをひきずるように身にたらして、人々に抱かれるようにしてヨタヨタと出入するのであった。なんという気の毒なお方だろう。座敷牢へ閉じこめられて黒幕にさえぎられて生活すれば、ヨタヨタするのも当然であろう。生きながら屍のような兄上。母なき人はこのように不幸であろうか。一枝の呪文が耳について離れないのだ。父母の陰謀がある筈はないと否定しながら、安心できない理由はなぜだろう。光子のうちに、光子の疑念が正しいものであったということが、どうやらハッキリしかけたのである。
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同じ邸内に住んでいても、光子はめったに英信を見かけることはなかった。まれに本邸の会席によばれることがあると、英信はうつむいているばかりで、食事をしているのと、いないのとの相違は、手と口が動いているいないの相違にすぎなかった。