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めいじかいか あんごとりもの
明治開化 安吾捕物
10 その九 覆面屋敷
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,820 字 · 54 页
死期もお近いって英信さんが仰有ってたわ」
いつもとぼけたような良伯の顔を狼狽が走った。彼の鼻ヒゲがバタバタ羽ばたいたように思われたほどである。
「英信が! いつ、そんなことを言いましたか! あのキチガイめが! イヤ、イヤ。ちがうぞ。いくら、なんでも、そんなことを云う筈がない」
このとぼけた人物にまで、こうキッパリ否定されるということは、彼女にはたまらないことであった。やっぱり話すべきではなかったのだ。この邸内にある限り、このとぼけた人物ですら、風守についての噂は常にタブーでなければならないのだ。
けれども、いったん言いかけた以上は、光子はゴマカシができなかったし、必死でもあった。
「さっき、藤ダナの下で、英信さんからおききしたばかりです。私はウソなぞ、つきません」
光子の鋭い眼、思いつめた様をジックリながめて、良伯は落ちつきをとりもどした。
「なるほど、そうですか。どんな病気で風守さまの死期が近づいたと申しましたか」
「私がそれをおききしているのではありませんか」
「そんな怖い目でお睨みになってはいけませんよ。美しいお嬢さまにそんな目で睨まれては、この良伯が石になってしまいます。