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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

14 その十三 幻の塔

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页

青空文庫

これは悪魔の目色だ。なんて深い光であろうか。どこにも油断がなく、どこにも軽やかな色がない。冷く凍りついた目であった。

島田幾之進もその眼光はただならぬが、そこには達人の温容がこもっていた。三次郎には、あたたかさ、甘さの影すらもない。日に一度顔を合わせることも稀れであったが、ベク助はその目を見ると石になるような悪感が走った。

「こいつ悪魔だ。化け者だぞ」

ベク助は自分の心に言いきかせる必要があった。

「こんな約束の違う野郎は珍しいや」

そうせせら笑ってみても、背筋を走る悪感はどうにもならないし、その正体はつかみようがなかった。

しかし、なにしろニセツンボになりきるのが何よりの大事で、まア、その心得にはヌカリがない自信はあった。

ところが自分がニセモノであるために、彼は妙なことに気がついた。

ある日仕事のキリがわるくて後片づけをしているうちに真ッ暗闇の夜になった。そこへお吉アンマが普請場を通りすぎたが、昼間通る時に比べて実に歩行が不自由だ。しきりに物に突当るし、その手さぐりのタドタドしさ、何倍の長時間を要して普請場をようやく通りぬけて行く。

メクラに夜も昼もあるものか。