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めいじかいか あんごとりもの

明治開化 安吾捕物

坂口 安吾

14 その十三 幻の塔

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,140 字 · 31 页

青空文庫

葉子を化け者のヨメにやるとは呆れた奴だ。のう、鉄馬。大坪彦次郎と平戸久作は生死をちかった無二の友。鉄馬と葉子は両家を一ツに結び合わせるカスガイだ。その堅い婚約には七年前にこのオレが立会っている」

主人の語気には若者を煽りたてる作意がこもっていた。

ところが鉄馬の返答は、意外に冷静沈着であった。

「平戸一成と大坪鉄馬は二人の父に代って、父と同じように生死をちかった無二の友です。葉子どのとの婚礼の必要はありませぬ」

「ほう。言うたな。しかし、なア。大坪彦次郎死後に至って挨拶もなく婚約を取消して化け者にくれてやる平戸久作の心が解せぬわ。イヤ。久作の心は解せる。化け者の人身御供に美少女を所望した島田が憎い。のう。久作に罪はないぞ」

「イエ。師も、先生も葉子を所望致されはせぬ」

葉子の兄、平戸一成の声であった。主人は相手の語気をそらして、うすとぼけて、

「ほう。師も、先生も、とは何事じゃ。師と先生と二人いるかな」

「師は島田幾之進先生。先生とおよび致すは島田三次郎どのです」

「あの化け者が何芸を教えおる」

「諸芸に神技を会得しておられます。弓をとれは飛ぶ矢を射落し、杖を握れば一時に百杖の閃く如く先生の姿を認めるヒマもありませぬ。